「仙臺まちなかシアターINおうちdeシアター」♯6「人間椅子 江戸川乱歩」佐々木久美子さんを紹介します!!

佐々木久美子さんを今でも、渋谷(シブタニ)!と呼ぶ人がいます。旧姓渋谷久美子さんは仙台の老舗劇団「麦」のご出身です。初めて、共演したのが米沢牛プロデューステント公演「落日」でした。長い手に白い軍手をして、ビロロ~ンと登場し、切れの良いセルフをかっ飛ばす豪快なエンターティナーでした。客席の笑いが止まらないのです。今のワハハ本舗の役者さんのような印象。80年代の仙台演劇界で、ひときわ目立っていました。ちょっと男勝りな部分もあったから、シブタニ!という呼び方が、みんなはしっくりいっていたのかも。
その後十月劇場の、時の葦舟三部作「絆の都」で一緒に旅に出ました。人工授精で生を受けた孤独な少女・リリムという役でしたが、めずらしくストイックな難役で、丁寧にアプローチしていた印象です。普段からとても元気で明るくて、ハチャメチャな印象が強いクミちゃんですが、実は心か細く、ストイックな面が多々あります。色々悩むんですね、器用な分だけときどき、自分の芝居を見失う。役者はみなさん神経質だし、打たれ弱いし、自信なくすし、か弱い生き物です。演出からきついダメを言われたらい、ずーっと、もしかすると一生悩む(…一生、憎くて恨む‥)場合もあります。それが役者の財産でもありますから、リリム役は、大きな彼女の転機だったかもしれません。
 そんな久美ちゃん(シブタニ!という印象は、最近はもうない。愛らしい久美ちゃんに変身です)にまたまた転機が!数年前に、元黒テント俳優の田村さんという方から、新しい芝居をつくりたいから、仙台の女優を紹介してほしいという依頼を受けまし
た。演出が、高田馬場プロトシアター(小劇場)を主宰する大橋宏さんということで、身体性がある人じゃないとだめだろうと思い、すぐ久美ちゃんを推薦しました。毎週、深夜バスで稽古に一年以上も通って、時間をかけてパフォーマーたちが共同でつくりあげる創作劇。
「地獄の様な稽古だったけど、ものすごく収穫があった」と喜んでいました。仙台公演を観ましたら、久美ちゃん素晴らしい、新しい久美ちゃんが、いた!いや、KUMIKOだぁ。国際派だったのだ。セリフの達者な役者から、感情の役者、そして感性の身体。言葉いらないじゃん!というくらいの発語しない身体言語の広がり。世界に行こうよ、KUMIKO!!
 最近は、舞踏の方も勉強し、また自分のユニットでも勢力的に作品づくりに挑んでいます。まだまだ進化したいという欲求が尽きないのです。素晴らしい。また5年前からAZ9ジュニア・アクターズや演劇クラブでも演出助手や客演、講師などをお願いしています。子どもからシニアまで、コミュニケーション力はとても高い。付き合い方にウソがないので、頼りにされるのです。これも素晴らしい。あっ、意外な面といえば、酒を呑むと「エロっぽいこと」を言い出します。それから人をたたいたりします。いわゆるカラミ酒ですが、場が盛り上がります。仙台の和田アキ子と呼んでいます。そして最後はボロボロと泣いたりします。苦労人です。

 さて、今回の「人間椅子」は、私も内容は知っていましたが、「こんな話だったのか!」と、改めてこの作品の魅力をKUMIKOに気づかせてもらいました。男たちの深層心理、性的な欲求をあらわに描き、苦境の時代の、精神の開放を詠う作品だと勘違いしていた私。いやこれは、人間の純真性と社会通俗に縛られて生きる「息苦しさ」を提示する深い作品だと。だんだん主人公の男が愛おしくなってくるのわけです。KUMIKOの日本人らしい、愛情深い感性が、そうさせています。またまたバージョンアップしたクミコです。情が深いのです。
 本人はたまに傷つくこともあるみたいですが、東北人クミコの活躍が、これから益々楽しみです。韓国公演も控えているとか。たまには、また大酒呑んで、暴れてくださいね。発散も大事です。           (文責・ギュウ)